tong-poo graphics
- 齋藤浩
私のデザイン事務所の名前はトンプー・グラフィクスといいます。 小学5年生のとき、YMOの『tong-poo』を聴いて衝撃を受け、ミュージシャンをめざしても坂本龍一は越えられないと悟り、ならば彼のレコードジャケットを作る人になろう! と決心したのです。初心忘れるべからずということで名付けました。 それから約四半世紀後に教授のアルバム『Chasm』のビジュアル制作のお手伝いをさせていただくことになり、人生たあ捨てたもんじゃないね、続けているといいことあるなあと心の底から感じました。 いまグラフィックデザインの仕事はとてもキビシい状況ですが、『tong-poo』を聴くと、新しいビジュアルアイデアが次々と脳内に生成されてきます。こうなったらどうにも作らずにはいられなくなり、たとえ仕事が無かろうが時間が無かろうが自主制作を続けてしまうわけです。やめようと思ってもやめられないから不思議です。たとえオーディオ機器を奪われても、脳内で曲は再生され、その都度アイデアが更新されグラフィックデザインが生まれてゆく。 これを続けていると、不思議と新しい出会いにつながります。私のデザインを見た人が声をかけてくれ、それが新しい刺激につながり、新しいビジュアルが生まれます。さらにそのビジュアルが新しい出会いを導いてくれることになるかもしれません。 今日あらためて、初めて『tong-poo』を聴いた日のことを思い出しました。 そのときの自分と明日出会う人とを繋げてくれるきっかけを作曲した人は、同じように世界中の人を繋げている。 今も。
- 2014 年